子供について
成人式シーズン。
去年成人式に行って色々衝撃を受けた。
中でもびっくりしたのは、結構沢山の同級生が結婚、はたまた子供がいるということだった。結婚をしているというのでも中々衝撃なのに、子供がいるとなると、その威力は倍増される。
仲が良かったり、昔好きだった女の子とかだったら尚更。
だいたい成人式の段階で結婚してたり、子供がいたりする子達は昔やんちゃしてた子が多い印象だ。
偏見かもしれないけど。
でも1人、Aは違った。
Aのことを知ったのはちょうど成人式シーズンの時だった。
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話は遡り、Aと僕は高校の同級生で部活が一緒だったところから仲良くなった。入学当初、あまり馴染めずにいた僕とくだらない話を一緒にしてくれた心優しい好青年だった。でも、頭は硬かった。教頭先生みたいに真面目で賢くて頑固だから、よく友達と喧嘩していた。今思えば性格も全然違う僕とよく仲良くしてくれたなと思う。
いつも通り部活をしていたある日、Aくんは僕に告白してきた。「好きな人ができた」
何故か僕がテンション上がった。こんな真面目人間で頭が硬いやつでも女子のことを好きになるんだなと青春を感じた。よく、○○ちゃんは可愛いとか、胸が大きい、とか冗談まじりの話は一緒にしてたけど、好きという単語を聞くことは無かったから、正直驚いた。
Aは僕に色々聞いてきた。告白するべき?なんて言うべき?いつ言うべき?今思えば全部「知らんがな」の一言で片付けられるような案件だったけど、部活しながら真面目に僕ともう1人の友達で相談に乗っていた、
そしてAは告白した。
返事はなんと「OK」
Aより僕の方が驚いていた。色々Aから聞いてるところからしたら、どうやらその子は好きな人がいそうで、片思いで、なんちゃらかんちゃら。
これは厳しそうだな…と感じていたから、まさか付き合えるとは思っていなかった。
告白の内訳は聞かなかった。Aのことだから、シンプルかつ真面目に告白したんだろう。
そこから、Aは変わった。
あんなに真面目でクール風だったAが、恋の病によって盲目でチョコレートのように甘々な恋愛人間に変わった。部活でのプレースタイルにも現れていた。常に真顔なのに、廊下とかで会っても心なしかニヤニヤしてる時が多く感じた。
恋って凄いなと感じた。恋は人を変えてしまうことがあると、その時強く感じた。
話は必然的に初デートの話で持ちきりになった。
どこ行けばいいかな?何食べればいいかな?プリクラ撮るべき?俺苦手なんだよ…。チューとかって?
プリクラに関してはマジで「知らんがな」と言ってしまったが、とにかく盛り上がった。
後日、Aは初デートを無事終えた。
その時、彼女と撮ったプリクラを見せてもらった。あまりも全部真顔で、恐らく彼女が施したであろう可愛いデコレーションと真顔との対比が面白かった。これは狙ってデコレーションしただろと思った。Aの緊張を十分プリクラから感じ取れた。
Aとは対照的に彼女の方は満面の笑みでAの肩に頭を乗っけていて、あぁAのことがほんとに好きなんだなぁと思った。
それから1ヶ月しないうちに、何故か2人は別れてしまった。
Aは抜け殻のように生気が抜けてしまって、正直可哀想だった。別れて数週間しても、Aの彼女に対する好きの気持ちが収まらず、よく相談に乗っていた。
地獄のような期間が続いた。いつものテンションでAに話しかけてもリアクションは芳しくなかった。
恋は人を悪い方にも変えてしまうなとも思った。
そこらへんから僕は部活に行かなくなったため、必然的にAと喋る機会も少なくなり、1.2年と経ち、そのまま卒業した。
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成人式前後の飲み会である事実を知った。
Aはどうやら受験に失敗し浪人をしているということは人づてに聞いていた。久しぶりに会ってあの時のこととかを笑い話にして飲みたいと密かに思っていた。
しかし、友達に耳を疑うようなことを聞いた。
「A、浪人中に結婚したらしいよ」
へ?と力の抜けた声を出してしまった。何を言っているのか意味が分からなかった。極め付けの言葉は
「そんで、子供もいるらしいよ」だった。
結婚でも意味が分からないのに、子供もいるという事実をもろに顎からもらったため、頭が混乱した。
ケンタは
こんらんしている!
何故なら、あのAが…だから。あのクソ真面目で、どうやって告白するの?とかプリクラとか撮るのかなぁ?とか真顔で僕に聞いてきたAが。まさか、結婚して子供がいるなんて。
正直信じられなかったし、信じなかった。
しかし便利な世の中というか、なんでも知れちゃう世の中というか。友達がAのSNSを見せてくれた。
そこに写っているのは、高校の頃のプリクラと何も変わらない、あの硬くて真面目な真顔でピースをするAと、その隣で幸せそうに笑うAの奥さんであろう女性。その女性の両手にスヤスヤと気持ちよさそうに眠る赤ん坊の姿だった。
ちょっと待ってくれ。
高校の頃は正直
「ったく、恋愛初心者が…」なんて思っていたが。
(*今思えば、よく当時の自分はその少ない女性経験を前面に出してデカイ口を叩いていたなと思う。)
あのAが。
周りの友達はあまり触れちゃいけないような雰囲気でいじっていて、正直自分もその場ではそのノリに便乗してしまったが、心の奥底では「やりやがった…。」としか思えなかった。それ以外の感情は正直なかった、あるなら
「相変わらずの真顔」だった。
しかし、そのSNSである一枚だけ、Aが笑ってる写真があった。
それは、Aの赤ちゃんとAがドアップで映ってる写真だった。撮影者は多分奥さんだろう。
赤ちゃんは気持ちよさそうに眠っていたが、Aは笑っていた。高校の頃、くだらないことを話ている時でしかほぼ見たことなかったAの笑顔。
あのAを笑わせてしまうのだから、よっぽど赤ちゃんが可愛いくて好きなんだろうな、と思った。
その時はAに会って、話を聞きたいと思ったが、周りの友達もAとまったく会っていないらしい。多分だけど、Aのことだから色々周りに話すのが煩わしく感じているんだろう。頭が硬いから奥さんも苦労してるだろう。
けど、幸せに暮らしていると思う。
初デートは何食べるべきかなんて聞いてきたAが、自分と奥さんと家族とで真剣に考えて、悩んで、下した決断なんだから。結婚も出産も、相当な覚悟がないとできないと思う。経験したことないから、未だに想像力が働かない。でも、幸せに感じる瞬間が沢山あるんだろう。毎日幸せって訳じゃないにしろ、帰ってきて、子供の寝顔とか見ると、何だか幸せに感じるみたいな。そういう小さな幸せが日常に散りばめられてるんだろうと思う。分からんけど。
小さい子供を抱えている若いお父さんとか見ると、たまにAを思い出す。それがAに似つかわしくないような昔やんちゃしてました系の人達でも。その人たちはその人たちなりの愛情で、子供と向き合っている。
正直子供が苦手だ。可愛いなぁって思うことはあるけど、喜怒哀楽が激しくて、エキセントリックな動きするからなんか怖いと思ってしまう。
徐々に克服できたらいいっす。
結婚の選択に迫られたら、今度は僕がAに色々聞くことにしよう。プロポーズとかって何て言うべき?とか。
多分聞かないけど。
お幸せに
(成人式シーズンに結婚して子供がいる人はやんちゃな人が多いなんて偏見を持ってしまってごめんなさい成人式に子供を連れてきてた人の風貌を見てそう思っちゃったんですごめんね)